遊休農地に特産品を作付け-岩手県遠野市土淵町

農村RMO事例
遊休農地に特産品を作付け
岩手県遠野市土淵町
道の駅「遠野風の丘」から見た遠野市の風景 
東日本大震災時に支援拠点として活躍した
収穫を待つビール原料のホップ畑
収穫を待つビール原料のホップ畑
宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」をイメージさせる「めがね橋」
宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」をイメージさせる「めがね橋」

岩手県遠野市土淵町の概要

遠野市は、岩手県中西部の花巻市と太平洋に面した釜石市との中間の内陸部に位置し、土淵町は遠野市の中心市街地の北東部にある里山地域である。人口は744世帯、1940人(2022年〈令和4年〉5月末現在)。
「遠野物語」は、1910(明治43)年、土淵町出身の民話収集の先駆者である佐々木喜善氏が語った遠野の不思議な現象を、柳田國男が聞き書きして119話にまとめた説話集。後に発刊された「遠野物語拾遺(しゅうい)」に収録されたものと合わせると418話にも上る。
同町の常堅寺裏を流れる小川の淵は「カッパ淵」と呼ばれ、その昔カッパが多くすんでいて、人々を驚かし、いたずらをしたと伝えられている。
土淵町の遠野遺産カッパ淵
土淵町の遠野遺産カッパ淵
岩手県遠野市土淵町

農村RMO「土淵町農村活性化協議会」の設立

土淵町では、遊休農地の活用や廃校利用、地元農産物の活用、過疎地域の活性化などの課題が山積しており、町内の農業、観光、福祉、地域づくりの各団体が集まって小さな拠点づくりを目指している。農村RMO事業を活用し、課題解決を図ることを目的に「土淵町農村活性化協議会」が設立された。 
同協議会は(以下カッコ内は役割)、株式会社遠野郷(そばの活用、特産品の開発)、認定NPO法人「遠野山・里・暮らしネットワーク」(事務局、事業の連携、新規農産物導入、農泊事業推進)、土淵町環境保全活動協議会(農地保全、農地活用)、土淵町まちづくり協議会(空き校舎の活用、事業の連携)、農事組合法人遠野こがらせ農産(特産品開発、農地保全活動)、土淵町米通り自治会(過去地域の活性化、農福連携)-の6団体で構成されている。
構成員の遠野郷がカッパ淵そばで運営する「かっぱの茶屋」座敷わらしソフトクリームが人気
構成員の遠野郷がカッパ淵そばで運営する「かっぱの茶屋」
座敷わらしソフトクリームが人気
構成員の遠野こがらせ農産が管理する稲田の風景
構成員の遠野こがらせ農産が管理する稲田の風景

農用地保全

3つの農村集落機能 資源 生産 生活
遊休農地に「飯豊そば」や「琴畑カブ」を作付け
協議会では、農用地保全は農業生産法人遠野こがらせ農産を中心に土淵地区環境保全活動協議会が農地保全と農地活用を担当。遠野こがらせ農産は、特産品開発と農地利用活用調査も担当している。
遊休農地や耕作放棄地には地元特産品の「飯豊(いいで)そば」や「琴畑カブ」の作付けを行い、農地保全を図る。地元の伝統野菜「琴畑カブ」は、通常のカブよりあっさりした風味でサラダに向いている。
以前より漬物として保存食とされてきたが、冷蔵庫の普及もあり徐々に生産量が減り消滅した。30年ほど栽培されていなかったが、遠野市内の岩手県立遠野緑峰高校が復活させ、同校の生産技術科野菜果樹研究班が加工の方法を研究している。
2022(令和4)年の漬物グランプリ(全日本漬物協同組合連合会主催)で、同研究班が考案、開発した「琴畑カブと3種の豆のしそ実漬け(エゴマ葉入り)」が、全国3位相当となる学生特別賞を受賞した(遠野市ホームページより)。
地元伝統野菜の琴畑カブ:NPO法人「遠野山・里・暮らしネットワーク」提供
地元伝統野菜の琴畑カブ
NPO法人「遠野山・里・暮らしネットワーク」提供

地域資源活用

3つの農村集落機能 資源 生産 生活
農家民宿や豊富な観光資源 空き校舎の活用
土淵町にはカッパ淵、伝承園、水光園、山口集落など遠野を代表する観光資源が豊富にあり、農家民宿や農家レストランとの有機的な連携により集客を図っている。
空き校舎の活用については、土淵町まちづくり協議会が中心となって活動している。
中学校再編により2013(平成25)年に遠野市内8校のうち5校が廃校となった。土淵町で唯一廃校になった旧遠野市立土淵中学校の有効活用については、市に対してさまざまな提言を行い、継続的に活用できる方策を模索していく。
新規の農産物や加工食品などは、協議会の構成員の直営店で販売する。
土淵町で唯一廃校になった旧遠野市立土淵中学校 有効活用を模索している
土淵町で唯一廃校になった旧遠野市立土淵中学校 有効活用を模索している

生活支援

3つの農村集落機能 資源 生産 生活
中心部から離れた小集落のケアを
生活支援については、土淵町米通り自治会を中心に、協議会のメンバーが中心部から離れた小集落に通い、集会を通じて課題調査を行っている。また、農福連携や活性化、農泊事業導入などの計画策定を進めていく。
土淵町の山間部の小集落
土淵町の山間部の小集落

今後の展開について 事務局担当のNPO法人・菊池新一会長

土淵町農村活性化協議会の事務局の役割を担うNPO法人「遠野山・里・暮らしネットワーク」は、遠野市の中間支援組織としてJR遠野駅近くにある「遠野旅の産地直売所」(2019〈令和1〉年開業)を拠点に、グリーンツーリズムや農泊の手配、市内観光のコーディネート、SNSなどでの遠野の情報発信などを展開している。農泊とドライビングスクールを連携させたグリーンツーリズムは大きな反響を呼び、遠野の関係人口を飛躍的に増大させている。同ネットワーク会長の菊池新一氏に同協議会の運営や今後の展開について聞いた。

遠野のまちづくりは以前から行政が主導して進め、全国的にも先進的だった。遠野の山間部には農業と福祉がコラボするところは山ほどある。高齢者や若くして障害を持った人にそれなりの仕事がある農村では、こうした高齢化や労働力の問題を単に福祉の観点だけで解決すべきではない。すべての人に役割があるので農村では年齢は関係ないからだ。統計で労働人口の分母から65歳以上が除外されているが、農村地域の統計では分母に65歳以上の人口も含むべきではないか。農村はいろいろなものがもともとつながって成り立っているが、これまでの行政の制度は福祉や農業などカテゴリー別に分離されていた。ようやく農村の実情に合った制度として農村RMOが出てきたという思いだ。
遠野は、内陸部と太平洋側の交流地点として人や物資が集まるところで、昔から遠くから来た人を受け入れるところがある。また、神楽などの伝統文化、どぶろくやジンギスカンなどの食文化、新鮮な野菜、民話や歴史など多くの資源があるが、まだまだ生かし切れていない。農家レストランと産直を組み合わせるなどいろいろ模索し、これからも遠野をもっと発展させていきたい。

地域紹介~岩手県遠野市

岩手県の内陸部に位置する遠野市は、周囲を山々に囲まれ、今も里山の風景が多く残る美しいところだ。柳田國男がカッパや座敷童子などこの地に伝わる逸話や伝承を記した「遠野物語」などによって遠野は「民話のふるさと」として有名になった。
太平洋型気候の一方、豪雪地帯でもある遠野市は、その冷涼な気候が栽培に適し、ビール原料のホップの一大産地となっている。真夏には市内各所で収穫を待つ青々としたホップ畑が見られる。また、市内には農山村の暮らしぶりを体験、地元の人と交流ができる農家民宿が100軒以上あり、グリーンツーリズムの盛んな地でもある。
里山の風景が美しい遠野市土淵町で、農村RMOとして活動を開始した「土淵町農村活性化協議会」を取材した。
地域の特徴や住民性などによって
「農村RMO」の形は多種多様です。
各地域の事例を是非ご覧ください。
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