農村RMO事例
特産米のブランド化と地産品で農地を守る
「三原村集落活動センターやまびこ」の活動
高知県三原村
高知県三原村
稲田が美しい三原村の里山の眺め

特産品の土佐硯

村内の下ノ加江川で捕れたツガ二(モズクガニ)
一般社団法人「三原村集落活動センターやまびこ」の設立
高知県幡多郡三原村では、高齢化の進行や人口の減少に伴う地域活動の担い手不足、買い物や移動手段といった生活面での不安など、さまざまな課題に直面している。2020(令和2)年の高齢化率は47.0%で、10(平成22)年には村内で唯一の生鮮食品店が廃業している。こうした状況を克服し、地域を活性化することを目的として、三原村では「三原村創生総合戦略」を策定。全村挙げての産業振興や担い手確保、人づくり、地域づくりを推進している。一般社団法人「三原村集落活動センターやまびこ」は、地域の課題を解決する村全体を包括する地域組織として18(平成30年)に設立された。〝安心して生活できる村〟〝生産活動を継続し、農村維持ができる村〟を目的として官民それぞれの立場の垣根を越えた発想で取り組むシステムづくりを目指しており、店舗部、福祉支援部、特産品販売促進部、移住促進部、生産部、観光部の6部門が活発に活動している。
22(令和4)年には農村RMOの制度を導入し、さらなる事業展開を図っている。構成員は、自治組織、婦人会、老人会、青年団、農業公社、森林組合、商工会、農事組合法人やまびこ、三原村社会福祉協議会、三原村ブランド化研究会、中山間直接支払協定(西部、東部)。伴走支援は、高知県(農業振興部農業政策課ほか)、三原村役場(地域振興課、農林業建設課)などが行う。また、高知県には県職員が現地に駐在する地域支援企画員制度があり、03(平成15)年度から実施されている。
里山の風景が美しい三原村で、農家民宿に滞在しながら農村RMOとして活動する一般社団法人「三原村集落活動センターやまびこ」を取材した。

三原村農業構造改善センターの案内板

一般社団法人「三原村集落活動センターやまびこ」の事務局
三原村農業構造改善センター内にある
三原村農業構造改善センター内にある

三原村役場庁舎

農用地保全
特産米のブランド化 シシトウのハウス栽培
一般社団法人「三原村集落活動センターやまびこ」(以下「やまびこ」)は、中山間直払集落協定の構成員として、広域連携体制の事務局を担当。同制度と多面的機能支払制度により、村内ほぼすべての農地の保全活動をしている。
四方を山に囲まれ、標高120メートルの台地ならではの気温差と澄んだ空気、山から湧き出る豊富な清水に恵まれた三原村は、高知県有数の良米の産地として知られる。粘りと甘みが特徴で、冷めても味が落ちにくいと評価が高い。
「やまびこ」の生産部は、2019(令和元)年に「三原米ブランド研究会」を設立し、地元農家の協力で低農薬の特別栽培米である「水源のしずく」を開発。ブランド化と販路拡大を推進している。
高知県産のシシトウは、全国の半分近くの生産量で日本一の栽培規模を誇り、農事組合法人「三原やまびこ」が20アールのハウスで栽培している。収穫からパック詰めなど人手はかかるが安定した収入になり、高齢者や女性といった地域の住民が生産活動に関わっている。農用地保全や雇用の創出、高齢者福祉など地域への貢献度は非常に高い。


一般社団法人「三原村集落活動センターやまびこ」(以下「やまびこ」)は、中山間直払集落協定の構成員として、広域連携体制の事務局を担当。同制度と多面的機能支払制度により、村内ほぼすべての農地の保全活動をしている。
四方を山に囲まれ、標高120メートルの台地ならではの気温差と澄んだ空気、山から湧き出る豊富な清水に恵まれた三原村は、高知県有数の良米の産地として知られる。粘りと甘みが特徴で、冷めても味が落ちにくいと評価が高い。
「やまびこ」の生産部は、2019(令和元)年に「三原米ブランド研究会」を設立し、地元農家の協力で低農薬の特別栽培米である「水源のしずく」を開発。ブランド化と販路拡大を推進している。
高知県産のシシトウは、全国の半分近くの生産量で日本一の栽培規模を誇り、農事組合法人「三原やまびこ」が20アールのハウスで栽培している。収穫からパック詰めなど人手はかかるが安定した収入になり、高齢者や女性といった地域の住民が生産活動に関わっている。農用地保全や雇用の創出、高齢者福祉など地域への貢献度は非常に高い。


特産米「水源のしずく」と三原米(上2枚)
地域資源活用
村内の活動グループと連携し特産品を販売特産品販売促進部は村内の活動グループと連携し、村の特産品(どぶろく、土佐硯、トマト、ユズ製品、生きくらげ、刺し身こんにゃくなど)の販売や昔ながらの村内の「食」の文化を引き継いだ商品の掘り起こしを推進している。
どぶろくはコメと米麹と水のみで造られる日本古来の酒。三原村は古くより高知県内でも良質のコメと水で知られ、農家は自前のコメでどぶろくを造っていた。酒税法によりどぶろく造りはいったん途切れたが、同村が2004(平成16)年にどぶろく特区に認定され、伝統の味が復活した。
「やまびこ」と連携する「土佐三原どぶろく合同会社」は、村内の農家が集まって16(平成28)年に設立された。代表の東久美さんは、「三原村のどぶろくは高知県内でも有名でしたが、7軒あったどぶろく農家は高齢化が進み、今は5軒となっています。個々の農家がどぶろく造りを継続していくのは、後継者の点で限界があるため、皆で協力して三原村のどぶろくを残そうと合同会社を設立しました。コロナ禍で売り上げが落ちて厳しい状況が続いていますが、2年前に発売した甘酒が好調で穴を埋めてくれています。販売量を増やすため新しい工場を建築中です」と会社設立の経緯と現状について語ってくれた。

三原村のどぶろく

準備が進む甘酒の新工場
生活支援
買い物拠点施設の継続支援を生活支援の将来ビジョンについては、買い物拠点施設の継続支援や集いの場である「やまびこカフェ」の運営、防災意識の啓発や緊急時の高齢者らに対する避難施設への誘導補助―を目指している。農村RMOとしての生活支援の具体的な計画は提示されていないが、「やまびこ」のこれまでの生活支援の活動を以下に紹介する。
2010(平成22)年に村内で唯一の食料品店が廃業し、翌年に買い物弱者対策として「三原村拠点ビジネス推進協議会」が主体となって店舗「みはらのじまんや」を開店。日用品、生鮮食品、野菜、総菜などの販売所として機能している。
16(平成28)年には店舗部が担当するレストラン「やまびこカフェ」がオープン。村の旬の食材を使った日替わり定食やバイキング料理を来訪者に提供しており、日替わり弁当も好評。コロナ禍前には年間1万人を超える来客数があった。「みはらのじまんや」と「やまびこカフェ」は隣接しており、利便性も高い。
福祉支援部が取り組んでいるコインランドリーは、17(平成29)年に高齢者への生活サポートの一環として運営を開始。村唯一の施設で利用度が高い。

「みはらのじまんや」(左)と「やまびこカフェ」

「やまびこカフェ」の日替わり弁当。ワンコイン(500円)で食べられる

「みはらのじまんや」では地産の新鮮な食材が並ぶ

コインランドリーは24時間営業。「みはらのじまんや」「やまびこカフェ」に近い
地域の紹介~
高知県幡多郡三原村
高知県幡多郡三原村は同県の南西部に位置し、四国地方最南端、最西端の村である。県庁所在地の高知市へ153km、土佐くろしお鉄道平田駅へは9.6kmの所にあり、四万十市、宿毛市、土佐清水市、大月町に囲まれた人口約1500人の山村。東京からの時間的距離が最も遠い自治体の一つと言われている。
標高120メートルの高原地帯に位置し、気候は温暖。コメ、シシトウ、どぶろく、ユズ、お茶が特産。同村が原産の黒色粘板岩は、村内の加工所で硯に加工・生産され、土佐硯の名称で海外からの評価も高い。四国霊場第38番札所の金剛福寺から第39番札所の延光寺への遍路道でもあり、多くの遍路が同村を通る。

積雪の三原村の風景

村内にはユズ畑が多い。収穫後に残っていたユズ